キューバ音楽の映画
たまたま夜中にBSで「ダンシング・ハバナ」というキューバ舞台のアメリカ映画が放映していたので、つい観てしまった。キューバ音楽ものの映画はけっこう観ているつもりだったけど、この映画は初めてだった。
ちなみに、映画の話だからといって、今回に関してはまともな批評ではないので、悪しからず。というのも、私はキューバ音楽ものの映画を観るときはほとんど音楽に酔いしれ、うねるリズムのなかで忘我状態になっているだけで、ほとんど鑑賞などしていないからだ。観ているというより、ほとんど一種の「トランス体験」だ。
そんなわけで、感想としては、あ~ぁ、気持ちよかった、というだけなのだが、まあ、敢えて映画としての批評をいえば、こりゃB級映画だな。しかし、まあそれでいいのだと思う。
私がこの手の映画のなかでも好きなのは、たしか10年ぐらい前のフランス映画だと思うが「サルサ!」というタイトルの映画がある。これはフランス人のクラシック・ピアノの名手が、キューバ音楽に目覚めてしまい、あるキューバ人の血を引く女性と恋に落ちるという物語だ。話の内容は、もう単純きわまりないロマンスというか、要は男と女が恋に落ちて行く手を阻む移民問題や人種問題などに翻弄されながらもいろんな障害を乗り越えていくっていう「お伽噺」なんだけど、それが実にいいんだね。めくるめくラテンの世界に浸っていると、「お伽噺、いいじゃないか!」「夢物語、おおいに結構!」っていう気分になってくる。
そういえば当時、この映画が銀座で上映された際には、鑑賞チケットにサルサダンス教室の「お試し無料券」みたいなのが付いていて、映画を見終わった女性が感動のあまり、「やっぱりロマンスはダンスからよ!」てな具合に誤解してしまい、即ダンス教室直行というパターンがけっこうあった。実際、この映画をきっかけとしてかどうだか分からないが、その当時サルサ・ダンスが20代、30代の女性のあいだでかなり流行っていたという記憶がある。そんなわけで、サルサ・クラブ人口はますます女性過多状態が増幅されていって、にわかサルサ女たちはロマンスからはますます縁遠くなっていくという、ちょっと面白い逆スパイラル状況が生まれていた。
ちなみにこの映画の音楽はたしか全編シエラ・マエストラが手がけているんだけど、シエラ・マエストラっていえば、アダルベルト・アルバレスと並んで、キューバ音楽の伝統を現代に蘇らせた貢献者ってことで、キューバ音楽の神髄がずいずい、ぐいぐい来る。映画のなかで、メンバーが即興的に演奏をしているシーンなんかが結構でてくるんだけど、そのシーンに浸っているだけで、もう天国にいるような幸せ感に包まれてしまう。
さらにこの映画では、キューバ音楽だけではなく、60年代ニューヨーク(のラテン人たち)を一世風靡したブーガルーも流れている。実はあの、プエルトリカンたちが流行らせ、70年代のサルサ勃興の源流ともなったブーガルーにだってキューバ音楽が貢献しているんだぞ、っていうシエラ・マエストラの気概が伝わってくるようで、すごく面白い。
想像してみてほしい。20世紀末のフランスを舞台としたキューバ音楽やダンスをめぐる映画のなかで、あの60年代NYラテン界を席巻していたレイ・バレットやらイシドロ・インファンテが流れているのだ! フランス、キューバ、ニューヨークの時空を超えた交錯が醸し出すハイブリッドな魅惑を、映画のなかで体験できるのだ。
そんなわけで、実はブーガルーも大好きな私としては、もう一挙両得の映画なのだ、この「サルサ!」は。
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